ましも先生の健康note

利水剤と利尿剤の違いって?西洋医学と中医学の両方から考えてみた。

①西洋医学的な面から見た水の流れとは?

人間の身体の80%は水で出来ています。人間は30日間食事をしなくても生き延びますが水は3日摂らないと命を落とします。生命を維持するために酸素についで絶対に必要な要素が水です。

身体の中の水は絶えず体内を循環しています。その分布は以下の通りです。

筋肉→約80%。

皮膚→約70%。

骨→約30%。

ってええ!骨にも水分あんの??

はい!note執筆中に叫ばない!!

あるんです。

水は飲食物から胃で吸収され、血液として全身を駆け巡り、身体の細胞に分配されます。これは体内水と呼ばれ3分の2が細胞内にとどまっています。そして残りの3分の1が血液・リンパ管の中・組織の隙間などに取り込まれています。

全身の細胞に栄養を届けて老廃物を回収したあとは腎臓に届けられ、そこから尿として排出されます。

健常な人間の身体において1日に入れ替わる水の量は約2000〜2800mlと言われています。

この出入りの水の量の目安は以下の通りです。

【身体に入ってくる水の量(目安)】

*飲みものによるもの→1000〜1500ml

*食べものによるもの→約800〜900ml

*代謝により発生する代謝水→約300ml

【身体から排出される水の量(目安)】

*最も多いのが尿→1000〜1500ml

*発汗によるもの→約600ml

*呼吸によるもの→約400ml

*大便に含まれるもの→約100〜200ml

と。このようにちょうどよく収支が取れています。

この出入りは西洋医学的にかなり重要視する場合もあり、特に入院中の患者さんに関しては入った水と排出された尿量のチェックは欠かせないそうです。(当社看護師の意見による。)

ただですね。普段の生活においてこの量はあくまでも目安です。

しつこいぞっ!!ましもよ!

はい。でもめっちゃ大切なことなんで声を大にして言わせてください。

最近1日◯リットル水を飲もう!といって頑張って摂っている方が多くいらっしゃいますが。

その日の気温や気圧などの天候変化。

食事の内容による水分量の違い。

筋肉量や仕事内容による発汗量。

体質や体調によって排出量も違う。。

水分は量を決めて飲んではいけません!!

水分はのどが乾いたらひと口ずつ。ゆっくりと丁寧に。唾液と混ぜるようにして飲み込む。この飲み方でいくとその人のその日の体調に合ったちょうど良い水分量が摂取できます。

量よりも飲み方を意識してみましょう。

*ただしお薬の作用により口渇が出る場合や加齢によりのどの乾きの感覚が鈍くなる場合も考えられますので詳しくはご相談いただくと安心です。

②西洋医学における利尿剤について

腎臓の糸球体で濾過された原尿のうち99%は再吸収されて血液に戻ります。ややこしい表現なのですが100mlの血液から濾し出して1mlの尿にするというイメージです。

作用する部位が異なりますが。この再吸収を阻害して尿量を増やすというのがほとんどの利尿剤の働きです。ではその使い分けをざっくりと。

利尿効果を期待する場合→心不全や腎疾患や肝疾患による浮腫。心臓や腎臓に負担がかからないように処方される。

降圧効果を期待する場合→高血圧症(本態性および二次性)

ラシックスやルプラックなどのループ利尿薬が主流。強すぎる場合にはフルイトランなどのサイアザイド系を用いる。併用することもある。

アルダクトンAなどのカリウム保持性利尿薬は効果は穏やかであるが、心不全の方の予後が良いというデータがあり予防的に処方されるケースも多い。

ループ利尿薬でもコントロールが難しい場合にはサムスカ=バソプレシンというホルモンに拮抗して効果を発揮する薬剤も使用される。

基本的には腎臓の糸球体において行われる水分の再吸収を阻害して尿量を増やすことが利尿剤の働きとなります。

③中医学的な面から見た水の流れとは?

中医学的な考えからすると体にとり込まれた水分は全身に分布しますが、五臓のうち特に関係の深い臓器は肺・脾・腎の3つとなります。

肺→3つのうち一番上部に位置しており上焦という通路を使います。脾から回ってきた水分を体内から体表に発散させて潤いを与える【宣発作用】。そして余った水分を回収して汗にしたり尿にして排出するため腎に降ろす【粛降作用】を持っています。この機能が低下すると咳・痰・浮腫などの症状が現れることがあります。

脾→3つのうち真ん中に位置しており中焦という通路を使います。飲食物から得た水穀の精微を用いて気(エネルギー)・血(血液やホルモン)・津液(体液やリンパ液)を生成するのが主な働きとなるので、この脾が弱ることで手足や全身の浮腫・下痢だけでなく食欲不振や疲れや重だるさも出ることが多くあります。

腎→3つのうち一番下に位置しており下焦という通路を使います。腎は水を司る臓器であり、その気化作用により体内の不要な水分を尿に変えて体外に排出するという働きを持っています。また脾を温めて正常に動かす作用も持っており、腎の働きが低下することで脾の働きも低下して全体的に流れが悪くなる。というパターンも多くあります。

特に加齢や過度な冷えなどによって負担がかかるため若いうちから冷やさないことや無理しないことを心がけておきたいですね。

④中医学における利水剤について

色々な種類の生薬や方剤がありますが。肺の宣発機能を助けるものや脾の働きを補うもの、腎を温めるものなどに分けられます。

代表的な処方を以下に挙げていきます。

*越脾加朮湯(麻黄・生姜・石膏・白朮・大棗・甘草)

麻黄によって肺の宣発機能を高める。石膏は重い性質があるので肺気を降ろすという作用も持ちつつ津液を補う作用もあり、利尿することで潤いが失われるのを防ぐようにしています。白朮は脾の働きを改善して湿気を処理する力を補っています。

腎炎やリウマチなどの急性的な浮腫によく用いられる処方です。

*苓甘姜味辛夏仁湯(乾姜・細辛・茯苓・五味子・半夏・杏仁・甘草)

肺の宣発機能の低下によって顔が浮腫んで咳や痰がよく出る症状によく使われます。この時にさらさらした痰など冷えていることが確認できると採用します。

この処方の主薬である乾姜は熱性が強く肺を温める作用があり、呼吸器に絡んでいる冷たい水湿を処理するための方剤となります。麻黄が入っていないため虚弱体質な方にも使えるのが便利です。

*五苓散(猪苓・沢瀉・白朮・茯苓・桂枝)

初めの4種類は利水剤。これにやや温める作用の桂枝を加えることで成り立っている方剤。【水湿困脾】といって水分のとりすぎなどによって脾の働きが低下している状態に用います。桂枝が入っているので明らかに熱がこもっている方にはこれを抜いた四苓湯を使うこともあるそうです。

下痢や浮腫だけでなく低気圧の接近によるめまいなどの不調も水湿が原因と考えて採用されることも多くあります。

*真武湯(附子・生姜・白朮・茯苓・白芍)

この方剤は主に腎を温める目的で採用される。特に主薬の附子が腎陽を益して気化作用を強めることで水の流れが改善されます。白朮や茯苓は脾の働きも助けるので水湿を排出する力もつけてくれます。また白芍は利水することで消耗した陰液を補うために加えられています。

いかがでしたでしょうか??

ざっくり言うと。

西洋医学における利尿剤は速やかにお水を出すためのもの。血圧や循環器に負担がかかっている場合。即効性を求める場合に著効。

中医学における利水剤。これは身体の水回りに関わる肺・脾・腎を全体的に整えて余分な水を排出できるようにするもの。体調全般を改善する傾向がある。

言葉では同じように見えてちょっと違うんですね。

西洋医学と中医学はそれぞれに優れた点があります。

はい。良いとこ取りできます。

*処方や方剤など薬品名も掲載していますが、浮腫などは自己判断が難しいこともあります。ぜひ専門家の方に相談して自分の体調に合わせたものを取り入れてみてください。

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