【肩こりには葛根湯】よく聞くフレーズです。
この葛根湯はすごく良い処方で使い方が合えばめっちゃ重宝します。肩こりだけじゃなく【風邪には葛根湯】っていうのも常識になりつつあります。
ただこの葛根湯には葛根以外にも麻黄という生薬が配合されておりこの麻黄に含まれるエフェドリンには交感神経の興奮作用があります。
要は「がんばりすぎ」の状態に長期間使うのには適さない処方とも言えます。
今はTVのCMやネット広告。医療用の処方せん薬でも服用されることの多い漢方薬。その正しい使い方を生薬構成から紐解いてみたいと思います。
①風邪と肩こりには本当に葛根湯?
さて冒頭に挙げた一番身近な漢方薬の葛根湯。風邪といえば。肩こりといえば。ですがどんな使い方が大切なのでしょうか?
実は葛根湯のもとになる処方に桂枝湯という処方があります。
桂枝→体表を和らげて発汗。経絡を温めて通じさせる。
芍薬→陰血を補って収斂させる。
生姜→桂枝の発汗作用を補佐する。
大棗→芍薬の陰を補う作用を補佐する。
甘草→それぞれの薬の性質を調和する。
桂枝はシナモンで想像できるように辛味で温めて発汗させる生薬の代表格。風邪の引きはじめに使いやすいのがこの桂枝湯となります。
そしてこの処方に葛根と麻黄の2種類の生薬を加えたのが「葛根湯」
葛根→体表を和らげて津液を生じさせる。
麻黄→体表を和らげて発汗。寒邪を散らす。
この2種類が加わる事でかなり処方としての斬れ味が鋭くなり、引きはじめの風邪に正しく使うと一発で効きます。使い方の指標に「項背部のこわばり」や発汗する処方のため汗がまったく出ない「無汗」というものが出ます。
指標となる「項背部のこわばり」を読み取って「肩こりに葛根湯」と使われることも増えてきましたが、このような解表剤と呼ばれる体表を和らげて発汗させる処方は長期間の服用を避けた方が無難のようです。
特に「頑張りすぎ」によって肩こりが発生している方はそちらの対処が必要となります。
②足のつりには芍薬甘草湯?
整形外科の処方でもよく見られ、ツムラ68番と呼ばれる有名な処方。
その名の通り芍薬と甘草の2種類から構成されています。
芍薬→陰血を補って収斂させる。
甘草→体の中を補って症状を緩める。
筋肉は血が不足することで痙攣や攣縮による痛みを発生するため「急な足のつり」をはじめ「胃痛」「腹痛」「下腹部痛」などにも適用されます。ただ一時的な症状の緩和しかできないので「痛み」や「痙攣」の原因となる血流低下・疲労や冷えなどの原因を考えて対処することも必要です。
*甘草の長期連用による偽アルドステロン症なども問題になっています。単なる一時抑えだけで対処することは副作用予防の観点からも控えてほしいところです。
③女性の味方。桂枝茯苓丸と当帰芍薬散の使い分け。
「いのちーーのはは!えーっ!」テレビでもよく聴かれる昔からの処方。
これにはいろんな生薬が入っていました。当帰・芍薬・川芎・紅花・大黄・桂皮・香附子・カノコソウ・人参・蒼朮・茯苓・半夏・呉朱萸・ビタミン・カルシウムなど。。。血を補い、胃腸の働きを補い、湿気を排出して、瘀血をとり冷えをさり、お腹を下す。。うーーんすごい。女性に良いとされる生薬をとにかく集めて入れてあるイメージなので。とりあえず服用してみてちょっと結果が良くない場合は処方を選び直すというのがオススメです。生薬構成も増えれば増えるほどその効果もマイルドになってしまうのとそれぞれの体調に合わせて必要ない生薬を抜いた方が良い場合が多いものです。特に冷えて下痢しやすい女性に大黄などは使わない方が良いかもしれません。
ということで代表的な方剤を挙げてみますね。
【桂枝茯苓丸】
桂枝→血脈を温めて通じさせる。
茯苓→脾胃を補って水分代謝を改善する。
牡丹皮・桃仁・赤芍薬→瘀血(血液の滞り)を流して痛みを改善する。
瘀血をさる作用があるので経血に塊の混じる方。子宮筋腫などのある方の生理痛や生理不順に続けて服用していただくことが多い処方です。補う成分がないので虚弱体質に近い方は単独での服用よりも併用するのがオススメです。
【当帰芍薬散】
当帰・芍薬・川芎→血を補って血流を改善する。
白朮・茯苓・沢瀉→脾胃の働きを改善して水分代謝を良くする。
補血することで肝の働きを改善。脾胃の働きを改善する作用もあるため瘀血による痛みや湿気によるむくみなどにも効果があります。とても穏やかな処方で使い勝手が良いためよく使われます。
他にも婦人科系では体質に応じて色々な処方が使われますのでこれらの処方で合わない方はぜひ専門店でご相談いただきたいと思います。
④漢方ダイエットの本当は?防風通聖散について。
テレビを見ていてびっくりするくらいの皮下脂肪が取れる映像。まさにすべての方が痩せる!ように見せられるかの有名メーカーのナイ○トール。ひと昔前にはコッ○アポAという商品名でも一世を風靡した処方。
そう。その名は【防風通聖散】。
防風・荊芥・連翹・麻黄・薄荷→疏泄(巡り)を良くして邪を散らす。
山杷子・石膏・黄芩→清熱瀉火する。
大黄・芒硝→熱を瀉して便通をつける。
滑石→熱を冷まし利水する。
桔梗→肺の宣発作用を助ける。
当帰・芍薬・川芎→血を養い血流を改善する。
白朮・甘草・生姜→脾胃の働きを良くして調和させる。
補血や脾胃の働きを改善する生薬もありますが。こちらの主な作用は便秘を解消して体に溜まった余分な熱を発散するためのものです。
便が出なくて血圧が高めで赤ら顔。虚弱体質とはまったく対極にいるような方に使う方剤となります。
「ダイエット」や「皮下脂肪」というキーワードに反応して色白で水分代謝が悪く冷えやすい人がジャケット買いされることも多く見られますが、これは余計体調も悪くなるし下手すると体重も増えやすくなります。
この方剤だけに言える事ではありませんが、漢方の方剤を病名だけで選ぶと調子が悪くなることって非常に多いパターンです。
症状にもよりますが2週間〜4週間ほど服用してみてちょっと違うかな?という時には専門店でご相談いただきたいと思います。
直接ご来店いただかなくても今はオンラインでのご相談ができる薬局薬店も増えています。ぜひこの機会に漢方専門店でのご相談も考えてみてくださいね♪
*かえで薬局では「こころと身体の長引く不調」をお持ちの方に漢方相談を承っております。ご来店できない方にはzoomでのご相談もお受けしております。まずはお気軽にお電話くださいませ。【相談専用窓口】0120−979−802