ましも先生の健康note

「頭痛のタネ」を種明かしします。

「痛いのなんてイヤイヤ〜♫ポンピ〜ン♪」

以前までよくテレビで流れていたCMです。なんてポップなメロディだ!今や小中学生用まで出てきている痛み止めですがこのCM にも現れているようにとっても手軽に服用できるイメージとなっています。さて突然ですがここで質問。

あなたは1か月に何日痛み止めを服用されていますか?

うちの店頭でも第1類医薬品のロキソニンをはじめ痛み止めをお求めになる方は本当に多いもので皆さんつらそうな顔をしてご来店されます。でもこれさえ飲んでおけば痛みと一時的にサヨナラできる。痛くてつらい時には救いの神のような存在に思えますよね。ただ痛み止めは痛みを根こそぎ取ってくれているのでしょうか?

実は先日Twitterにも載せたニュースでもあったのですが。今「頭痛薬の乱用」が問題になっています。1ヶ月の間に痛み止め成分が1種類のいわゆる単剤の服用が15日以上。複数の成分が含まれる複合剤の服用が10日以上に当たる場合は乱用にあたるというものです。

この乱用を防ぐためには痛み止めを服用するだけでなく生活の中で原因=頭痛のタネを取り除いていくことが大切になってきます。

頭痛のタネは本人がよく分かっていることもありますが、職場の空調による冷えであったり、長年悩んでいる肩こりだったり、避けられないストレスだったり。もう仕方ないと諦めている方も多いのが実際です。

今回はこの頭痛について深く掘り下げることで長年悩んでいる頭痛のタネを種明かししていきたいと思います。

まず初めに西洋医学的な頭痛の分類をしてみましょう。

頭痛は一次性頭痛二次性頭痛に分けられます。

一次性頭痛とは外傷や器質的な異常などの「原因が見たらない」いわゆる「頭痛持ちの方の頭痛」です。これに対して二次性頭痛とは「原因がある」頭痛と仕分けされます。中には命に関わる重大な疾患によるものも。突然バットで殴られたような痛みが出た時にはクモ膜下出血などが疑われますのですぐに救急車を。速やかな受診が必要となります。

この二次性頭痛の対処は脳神経外科などの治療が不可欠となりますが、慢性的な頭痛で薬局にいらっしゃるほとんどの方が一次性頭痛となります。これは慢性頭痛の診療ガイドラインに沿ってみると3つの頭痛から成り立っています。名付けて「頭痛三兄弟」です。

①片頭痛

片頭痛は頭痛発作を繰り返す疾患で頭部の片側にズキンズキンとした拍動性の痛みが出るのが特徴です。1回の発作は4〜72時間持続します。体を動かすと頭痛がひどくなります。ムカムカ・吐き気・目の前がチカチカしたり音に過敏になったりすることも随伴症状として挙げられます。

日本での有病率は8.4%で実に12人に1人が片頭痛もちと言うデータも!中でも20〜40歳の女性に多く現れています。

急性期にはトリプタン系というお薬(イミグラン・レルパックス・ゾーミック・マクサルト・アマージなど)を頓服しますが、ひと月に10日以上の服用は避けた方が良いとされます。片頭痛の発作は激烈につらいので次の発作への恐怖感からつい過量になりがちなので注意が必要となります。

片頭痛予防薬にはてんかんの薬や抗うつ剤・高血圧の薬などの一部が有効とされていますが、発症は血管の収縮と拡張のアンバランスによるところが大きく自律神経やホルモンバランスの乱れを整えることが日常生活の中で必要になってきます。

②筋緊張性頭痛

その名の通り筋肉の過緊張により痛みが発生します。頭痛の30〜70%がこのタイプに当たります。後頭部に鈍い痛みが広がるのが特徴でほとんどの場合に肩こりや首回りのこりや痛みも伴います。

長時間のパソコンでの作業やスマホによるストレートネック。過度なストレスによる酸欠や冷えによる血流障害などが原因となります。

片頭痛に使用するトリプタン系ではなくアセトアミノフェン(AAP)やアスピリン・ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)で対応することがほとんどです。

一般的に薬局薬店で手軽に買えますが痛み止めの成分が一種類のもの(単剤)はひと月15日以上。痛み止めの成分が複数含まれるもの(複合剤)はひと月10日以上で乱用に位置づけられます。痛みの信号をブロックするだけでなく原因も取っていくのが大切となります。

③群発頭痛

群発頭痛は非常に激しい痛みがどちらか片方の目の周囲に発生。一定期間連続して毎日出現するので片頭痛と混同されがちですが片頭痛よりも頻度が低く男性に多いのが特徴です。この痛みが出ている時はお酒は厳禁。昼寝や過労・ストレス・顔面への冷風や逆に熱が誘因となることもあります。

突然激しい痛みが出るところは三叉神経痛に似ていますが、三叉神経痛の場合は数秒間と短い痛みが反復しますが、群発頭痛の痛みは15〜180分持続します。

片頭痛でも使われるトリプタン系のイミグランが有効とされています。また予防にステロイドや抗うつ剤、てんかんの薬や高血圧の薬を使います。

いかがでしょうか?この三兄弟。①片頭痛と③群発頭痛は痛みが激しくなるため病院での受診をされる方がほとんどです。しかも発症が血管の収縮と拡張が絡むため原因に対してのアプローチが複雑です。一方で②筋緊張性頭痛は痛みも鈍く薬を飲んだら楽になる特徴からか?あまり原因を深く考えなかったり原因が分かっても放っておかれる方が多い気がします。

さて冒頭で一次性頭痛は「原因がない頭痛」と書きましたが、中医学的に見ると痛みが発生する原因は多岐にわたります。

ここからは中医学的な側面から頭痛を深く掘り下げてみましょう。

中医学では「不通即痛」「通ぜざれば即ち痛む」という言葉にあるように痛みは物理的な炎症や狭窄や血流障害によって気血水の流れが滞ることで起こるとされます。代表的な原因としては血行が悪くなって発生する「瘀血」、水分代謝の低下によって生じる「痰湿」「風・寒・熱・湿」などの邪気が気血の流れを疏滞することが挙げられます。

①外感病により発生する頭痛

いわゆる風邪などの急性病によるものです。

風寒頭痛→寒邪が入りこんで起こる。痛みは強い。頭部だけでなく全身にも痛みが現れることもあります。

風熱頭痛→熱感をともなった頭痛。発熱・のどの痛み・口渇・咳・黄色い痰が伴うこともあります。

風湿頭痛→頭が重く締め付けられるような痛み。身体の重だるさ・食欲不振・軟便などの胃腸症状も伴うことが多いようです。

②気虚による頭痛

過労によって脾胃の運化機能=飲食物を気血に転化する働きが低下して起こします。疲れた時に頭痛が強くなるのが特徴。息切れ・倦怠感・食欲不振などが伴うこともあります。疲れを溜めないこと。脾の働きを良くして気を補うもの=ホクホクしたイモ類などがオススメです。

③血虚による頭痛

不栄即痛(=栄えざれば即ち痛む)。血虚によって頭部を滋養することができず痛みが起こります。めまいがして頭がふらついたり、顔色が悪かったり。動悸や不眠なども伴うことがあります。長時間パソコンやスマホなどで目を酷使したり睡眠不足が続いたりすると血虚は悪化するので注意が必要です。

④腎虚による頭痛

痛みは強くないが慢性化している場合は腎精の不足=腎虚によるものが多く見られます。腎と耳は親子関係にあたるのでめまいや耳鳴りなどを伴ったり、手足の冷えや足腰のだるさなどの腎虚の症状が出たりします。冷たい飲み物・サラダなどの生野菜・過度な空調で身体を冷やさないようにすること。特に夜は腰回りを湯船で温めてから休むようにすることが大切です。

⑤肝火による頭痛

長期間にわたるストレスが肝の働きを失調して肝火という症状に発展。片頭痛もこの肝火の頭痛に分類されます。頭部の熱感・赤み・目の充血や渇き。口の苦味や口渇・キーンという甲高い耳鳴り・便秘が伴うこともよくあります。

自律神経やホルモンバランスを整えることがまず必要となります。深呼吸や軽めの運動などストレス発散の方法を持っておくことが大事。酸味のあるもので肝を養うことも忘れずに。

⑥痰湿による頭痛

水分の摂りすぎや甘いものの摂りすぎ・水分代謝の低下などによって体内に生じた水溜り=痰湿が気血の流れを塞ぐことで痛みの原因になります。

この場合の頭痛はしつこく長引くことも多いです。めまい・胸がモヤモヤする・胃がムカムカする・舌の苔がベットリつくなどの特徴もあります。

水分の摂り方や食事のバランスを見直すこと。ハトムギやトウモロコシ・豆類・ウリ類など水分の排出を促す食材も積極的に取り入れて。

⑦瘀血による頭痛

慢性的な疾患や重い疾患にともなって現れることが多く、痛む場所は決まっていて刺すように激しいのが特徴です。顔色は暗い感じで舌の裏に太く青い筋(舌裏静脈の怒張)が見られることも多いです。瘀血は疾患以外にも冷えや血虚などが長引いて発生することもあります。長期的な体質の見直しも必要な場合があります。

いかがでしょうか?一言で「頭痛」といっても西洋医学的な側面と中医学的な側面で分類も原因も変わってきます。

痛みは日常の中で生活の質を著しく低下させるものです。痛みがある時は痛み止めで抑えるなど出来るだけ早く症状を抑えることが大事です。

一方で自分自身の頭痛のタネ=原因をしっかりと把握してそれに対する対処を講じるのも大切なこととなります。

頭痛は身体の不調を知らせる注意信号=サインです。あなたの頭痛のタネは見つかりましたか?

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