ましも先生の健康note

今こそ摂取!大切なミネラルの話。

全国的に梅雨入りしているところも増えてきていますが、このジメジメとした季節が終わればいよいよ夏!世の中は長引くコロナの影響でいまだに不安感も漂っていますが「夏」という響きは心が少し明るくなる気がしますね。

中医学的にも夏は陰陽の気が活発になって生命力が旺盛になる季節。精神的にものびのびとして身体的にも陽気を発散させるように活動的に過ごせるようになります。そんな夏は発汗による脱水症状とともにミネラルが失われるのが体調を崩す原因に。命の危険につながる熱中症もミネラルの不足が大きく関わります。

ここで疑問。ミネラルってなんか身体に良いイメージはあるけどどんな働きをするの??今回のnoteはなんとなく知ってるけど何なんだ?というミネラルを掘り下げてみます。

ミネラルとは三大栄養素(糖・タンパク質・脂肪)、ビタミンに次いで「第5の栄養素」と言われ大変重要視されています。

人間に必要なミネラルは16種類。1日の必要量が100mg以上のミネラルを「主要ミネラル」、100mg未満のミネラルを「微量元素」と言われており以下のように分類されます。

【主要ミネラル】カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、リン、硫黄

【微量元素】亜鉛、鉄、ヨウ素、コバルト、クロム、銅、マンガン、モリブデン、セレン

ではこのミネラルはどのような働きを担っているのでしょうか?これは本当に多彩なのです。

以下で食事から摂取した糖分からエネルギーを産生する働きを例にあげてみます。

身体のエネルギー通貨は「ATP」と呼ばれており、すべての細胞の生命活動に必要なものとなります。このATPを生む過程は3つ。解糖系。電子伝達系。そしてミトコンドリアにおけるクエン酸回路(TCA回路)となります。

解糖系は酸素を必要としない経路で1個のグルコースから2個のATPを生み出します。息を止めてダッシュした時の筋肉の中で行われるのがこの解糖系。電子伝達系はミトコンドリア内膜での電子の伝達によって3個のATPを産生します。

そして一番エネルギー産生量が多いのはクエン酸回路。体外から取り入れ赤血球によって運ばれてきた酸素も最大限に利用して32個ものATPを産生します。

この回路は糖質を摂らなくても肉などのアミノ酸から糖新生を行って血糖を維持するという複雑な働きも持っています。肉しか食べないライオンなどが餓死しないのもこの働きのおかげなのです。

この大切なミトコンドリアにおけるグルコースからのATP製造過程において必要なのが各種ミネラルなのです!この経路と必要なミネラルを以下に記します。

①食事を摂って血糖値が上昇する。

グルコースを利用・貯蔵するホルモン=インスリンが分泌。ここで亜鉛トランスポーターという輸送屋さんが活躍します。せっかく分泌されたインスリンもこの亜鉛の量が少ないと肝細胞に取り込まれて分解されてしまいます。その結果、全身の細胞にインスリンが行き渡らなくなり糖尿病のリスクが高まるのです。

また高血糖の状態を抑制するのがカルシウム糖尿病によるアシドーシス(血液が酸性に偏る状態)を予防するためにセレンが役立っています。

分泌されたインスリンの感受性を高めるのにクロム。現在研究中ではありますがインスリン受容体を活性化させるミネラルとして働くと言われています。この他にも動脈硬化を引き起こすTNF-αを抑制するのに亜鉛とセレン。グルコースの取り込みを助けるトランスポーターを活性化するのにナトリウムとカリウム。血管をきれいに保ってくれるアディポネクチンの活性化にケイ素・マグネシウム・亜鉛が役立つことが分かっています。

④TCA回路の酵素の中でピルビン酸キナーゼを活性化するセレンをはじめこの回路を回していく酵素の補酵素として鉄・亜鉛・ビタミンB1が使われているのです。

⑤最後にこの回路を回していくのに発生するのが活性酸素です。いわば工場から出た有毒ガス。これを除去するのが銅・亜鉛・セレン。SODなど抗酸化酵素の補酵素なのです。

ミネラルってすごすぎる!!食べて得た糖分からエネルギーを得るためにこれだけのミネラルが関わり働いているのです。

みんながひとりのために!まさにワンチーム。

逆に言うと糖分を摂りすぎることでミネラルを消費していることも無視できません。たとえばカルシウム。甘いものを食べすぎるとこの糖の代謝にカルシウムを使うためしっかりと補給しないといけません。

コーラを飲むと歯が溶けるぞ!って昔の子供たちは脅されていましたが、あながち迷信ではなかったようです。

またストレスを受けたときにも実はミネラルが失われます。ストレスを受けたことでアドレナリンが分泌。交感神経を興奮させるだけでなく血糖上昇させて筋肉の活動量を増やす準備をする。この一連の動きによってミネラルが消費されるという流れになります。

寒冷ストレスや精神的なストレスを与えたマウスは尿中へのカルシウムやマグネシウムの排泄量が増えたという実験データもあります。

栄養学的な側面に対して東洋医学の考え方でもミネラルは重要です。五行説の中の五味で考えるとミネラル=鉱物の味は「苦味」に当たります。これは五臓の中では「心」に当たります。特に心は夏に不調を起こしやすくなります。ミネラルの失調で一番起こりやすくなるのが熱中症です。熱中症は脱水によるものと思われがちですが脱ミネラルにより重症化します。けいれんや失神など起こした患者さんには単に水ではなく経口補水液などが必要になるのもこの事の裏付けになるのではないでしょうか?

トップ画像は「ドべネックの桶」というイラストです。せっかく摂った栄養を円滑にエネルギーに変えていくために。細胞1つ1つをきれいに保つために。ミネラルはそれぞれが微量でも必要量を保っておかないと不調の原因になります。一種類を多量に摂取するのではなくすべてバランスよく摂取することが大切です

難しいことはありません。好き嫌いなくしっかりとバランス良く食べる事。旬のものを取り入れて多くのものを食べることを心がけるのがミネラルバランスを取る秘訣(コツ)となります。

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