急に「キーン」という甲高い音が鳴る。
ずっと「ジーっ」というセミの鳴くような音が鳴る。
命に関わるような症状ではないが、長引く不快感で相談に来られる方が後を絶たない耳鳴り。耳鼻科にかかってもなかなか改善しない方も多いのは何故なのか?
今回は耳鳴りについて書いてみたいと思います。
まず耳はどのような構造でどのように音を感知しているのでしょうか?
耳は外耳、中耳、内耳の3つに分けられます。
*外耳→鼓膜より外側の部分。耳介(顔より外に出ているいわゆる耳)で音波を集めて外耳道を通って鼓膜を振動させます。
*中耳→鼓膜から内側の空間。3つの耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)によって鼓膜から伝わった音波をおよそ20倍に増幅させます。
中耳にある鼓室は耳管を通じて鼻やのどにつながっているため、鼻炎が中耳炎に波及したり鼻づまりから耳の閉塞感や耳鳴りが出ることもあります。
*内耳→頭蓋骨にあいた複雑な「骨迷路」という洞穴部分にリンパ液が満たされています。中耳で増幅された振動がこのリンパ液に伝わり「膜迷路」の蝸牛管で音として感知されます。
このように人間の身体の中でも耳の構造はめちゃくちゃ複雑です。
外気にさらされている目に比べると耳は頭蓋骨の内側にめり込んでおり守られている構造で不具合が起こりづらくなっているはずです。逆に言うと一度不具合が出ると改善までに時間がかかるということも言えます。
耳のトラブルは耳かきで外耳道を傷つける外耳炎や感染症を除いて、ほとんどが内部の不調から起こっていると考えられます。
実際に病院では耳鳴りは「疲れ」「ストレス」「老化」が原因とされることがほとんどでお薬はビタミンB12やATP製剤、精神安定剤などが処方されています。
耳の働きの中で音を感知する流れをはじめに書きましたが、中医学の考え方において耳鳴りは気血水の巡りが悪くなることで起きます。実は「疲れ」「ストレス」「老化」が根本的な原因になることが多いのです。
ここでざっくりとですが耳鳴りの区分をしてみます。
*キーンという甲高い音の耳鳴り
五臓の中で「肝」の失調によるものとされています。ストレスが高じたり飲食過多により身体にこもった熱が原因にあります。急性的に起こることも多くあるため改善も早いことが多いです。
*ジーっというセミの鳴くような音の耳鳴り
五臓の中で「腎」の失調によるものとされています。血虚などの「肝」の弱りが絡んでいることがあり「キーン」という耳鳴りが取れたら「ジーっ」という耳鳴りが残るというパターンもあります。これは腎虚=老化現象でも起こるため改善には時間がかかることが多いです。
*ボーッと音がこもっている
いわゆる耳の詰まり。耳鼻科では耳垢などの物理的なもの。突発性難聴などによるものなどが多いとされていますが、ストレスにより気の巡りが悪くなっているもの。鼻の状態が悪いため耳管が狭くなり中耳の鼓室が陰圧を起こしてしまっていることが原因にあることも多いです。
以上を踏まえて長引く耳鳴りを根本的に改善するために生活で気をつけたいことをまとめます。
①質の良い睡眠を充分とる。
どんなに忙しくても睡眠に変わる養生はありません。睡眠時間は7時間が理想的。
また寝る前までスマホなどをみているとブルーライトにより覚醒成分のオレキシンが分泌。深い睡眠が妨げられます。寝る前1時間以上はスマホを見ないように注意しましょう。
②目の使いすぎを改善する。
前項にもあげましたがスマホやパソコンなどで目を使いすぎると肝に貯蔵した血が大量に消費するため肝血虚の原因となります。肝血虚は甲高い耳鳴りにつながります。また生理前になると調子が悪くなるという人も血虚は大敵です。
目を使う仕事の方は時々休憩して温かいタオルを目に当ててマッサージなど。こまめにいたわってあげましょう。
③酸味のあるものや香りの強いものを積極的に摂取して。
五臓をつかさどる味のうち「酸」味が肝を養います。レモンや酢の物などを積極的に。醤油でなくポン酢を使うことも肝を助けることになります。
またジャスミンやカモミールなど。ミントやセロリ・香菜などの香りの強いものは気の巡りを良くします。ストレスを感じた時には取り入れてみてください。
④水分の摂り方はがぶ飲み注意!
最近1日○リットルなど頑張って水分を摂っている方を多く見受けます。水分はがぶ飲みするとたくさん摂ることができます。
「水分はひと口含んでゆっくりと唾液と混ぜながら飲み込む。」これが基本です。身体に余分な水が溜まると「腎」に負担がかかります。「腎」はジーっと言う耳鳴りの原因になるだけでなく冷えや老化などに直結します。注意してください!!
⑤食事中の水分は控えてよく噛みましょう。
食事中の水分を摂るとしっかり噛まなくなります。ひと口噛むごとに3.5mlの脳血流が増えると言われています。血流低下は耳鳴りの原因となります。
またしっかり噛めるようになると薄味でも満足できますし腹八分目で満足感も得られるため肥満予防にもなります。食べ過ぎ飲み過ぎが耳鳴りの原因になっている方以外でもひと口30回を目標に噛んでみましょう。数えてみると意外と噛んでいないことに気付けるはずです。
なかなか改善しないという耳鳴りですが以上の5点に気をつけてみるとすぐに完治とはいかなくても少しずつ改善していきます。そしてこれが改善していくことで「肝」と「腎」の働きが良くなるためストレスに強い、若々しい自分に近づいていきます。ぜひ出来ることから取り組んでみてください。日々の積み重ねが大切です。